障害のある子どもを育てていると、一度は考えることがあります。
「自分たちがいなくなったら、この子はどうなるんだろう?」
いわゆる「親亡き後」の問題です。
まだ子どもが小さいと、
「20年後、30年後のことなんて考えられない……」
と思うかもしれません。
私自身もそうです。
毎日の生活、学校、療育、病院、仕事。
まずは目の前のことを何とかするだけで精一杯です。
でも、障害児家庭のお金や制度について調べていくと、
「親が元気なうちに、少しずつ準備しておいた方がいい」
と思うようになりました。
なぜなら、「親亡き後」は単純に
「いくら貯金があるか」
だけの問題ではないからです。
子ども自身の収入、毎月の生活費、親の資産、相続、住まい、福祉サービス、そして「誰がお金を管理するのか」まで考える必要があります。
この記事では、障害のある子どもの親が今から考えておきたい「親亡き後のお金」について、できるだけ分かりやすく整理します。
- 「親亡き後」は、親が亡くなった後だけではない
- まずは「子ども自身の収入」を考える
- 20歳になると、今までの手当も変わる
- 「親亡き後に必要なお金」は、家庭によって違う
- 大切なのは「毎月いくら足りないか」
- 障害福祉サービスも生活を支える
- 「誰がお金を管理するのか」も重要
- 成年後見制度についても知っておく
- 親の財産をどう残すかも考えておく
- 遺言書も「親亡き後」の準備
- 「心身障害者扶養共済制度」も備えの一つ
- 生命保険も選択肢の一つ
- お金だけでなく「生活情報」も残しておく
- 今から「親亡き後ファイル」を作っておく
- 「親しか知らない情報」を減らしておく
- 「親亡き後」は、お金だけを考えない
- 我が家も「今から少しずつ」でいいと思っている
- 「親亡き後」を考えると、今の生活も見えてくる
- まとめ|親亡き後のために、今からできること
「親亡き後」は、親が亡くなった後だけではない
まず考えておきたいのが、
「親亡き後=親が死亡した後だけ」ではない
ということです。
例えば、
- 親が病気になって入院した
- 大きなけがをした
- 認知症になった
- 介護が必要になった
- 突然仕事ができなくなった
ということもあります。
そのとき、子どもの生活を支える人が必要になります。
つまり、
「親が亡くなってから考える」のではなく、「親が動けなくなった場合」も含めて準備しておく
ことが大切です。
まずは「子ども自身の収入」を考える
親亡き後のお金を考えるなら、最初に確認したいのが、
「子ども自身に、将来どのくらいの収入があるのか」
ということです。
その代表的な制度が障害年金です。
20歳前から障害の原因となる傷病について初診日がある場合、一定の障害状態に該当すれば、20歳以降に障害基礎年金を受け取れる可能性があります。
2026年度の障害基礎年金は、
- 1級:年額1,059,125円
- 2級:年額847,300円
です。
ただし、
「障害がある=必ず障害年金がもらえる」
というわけではありません。
障害年金には独自の認定基準があります。
そのため、今の段階では、
「将来は障害年金をもらえるはず」
と決めつけるのではなく、
「20歳以降の収入の柱になる可能性がある制度」
として知っておくのがいいと思います。
20歳になると、今までの手当も変わる
障害児を育てている家庭にとって、20歳は大きな節目です。
例えば、
特別児童扶養手当
20歳未満の障害児を家庭で監護・養育している父母などが対象となる手当です。
2026年度は、
- 1級:月額58,450円
- 2級:月額38,930円
となっています。
障害児福祉手当
重度の障害があり、日常生活で常時の介護を必要とする20歳未満の在宅障害児が対象です。
2026年度は、
月額16,560円
です。
このように、現在受け取っている子ども向けの手当には、年齢による区切りがあります。
そのため、
「20歳になっても今と同じ制度が、そのまま続く」
と考えない方がいいでしょう。
20歳になる前から、成人後の制度へ切り替わっていくことを知っておくことが大切です。
「親亡き後に必要なお金」は、家庭によって違う
ここで一番気になるのが、
「結局、いくら貯めればいいの?」
ということだと思います。
3,000万円?
5,000万円?
1億円?
でも、実際には一律の答えはありません。
なぜなら、
- 子どもの障害状態
- 障害年金の額
- 将来働けるかどうか
- グループホームを利用するか
- 施設で生活するか
- 毎月の生活費
- 住居費
- 医療費
- 親からどれだけ資産を残せるか
- 自治体の制度
などによって、大きく変わるからです。
だから、
「障害児だから○○万円必要」
という数字だけで考えるのは難しいと思います。
大切なのは「毎月いくら足りないか」
私なら、親亡き後のお金を考えるとき、
「資産総額」より「毎月の収支」
を見ます。
例えば、仮に将来、
毎月の生活費が15万円。
本人の年金などの収入が月8万円。
だったとします。
すると、
毎月7万円の不足
です。
年間では、
7万円 × 12か月=84万円
となります。
仮に30年間、この不足分を資産から補うとすると、
84万円 × 30年=2,520万円
です。
もちろん、実際にはこれだけで必要額を決めることはできません。
物価が変わるかもしれません。
年金額も変わる可能性があります。
住居費や医療費も家庭によって違います。
それでも、
「将来いくら必要?」ではなく、「毎年いくら不足する?」
と考えると、かなり具体的になります。
障害福祉サービスも生活を支える
親亡き後の生活を考えるとき、
「子どもが一人ですべて生活しなければならない」
と考える必要はありません。
障害福祉サービスには、
- 生活介護
- 共同生活援助(グループホーム)
- 居宅介護
- 短期入所
- 就労系サービス
などがあります。
例えば共同生活援助、いわゆるグループホームでは、住居において相談や入浴、排せつ、食事など、日常生活上の必要な援助を受けることができます。
障害福祉サービスには、所得に応じた月額の自己負担上限もあります。
そのため、
「将来の生活費を全部親の資産で負担する」
という考え方だけではなく、
障害年金+福祉サービス+本人の収入+親から残す資産
という組み合わせで考えることが重要です。
「誰がお金を管理するのか」も重要
親亡き後について考えるとき、個人的にかなり重要だと思っているのが、
「お金を誰が管理するのか」
という問題です。
例えば、親が子どもに2,000万円を残したとします。
「2,000万円あれば安心」
と思うかもしれません。
でも、
その2,000万円を誰が管理するのでしょうか?
という問題があります。
子ども自身がお金を管理できれば問題ありません。
しかし、障害の程度によっては、
- 銀行口座の管理
- 家賃の支払い
- 光熱費の支払い
- 契約手続き
- 大きな買い物
- 財産管理
などを一人で行うことが難しい場合があります。
つまり、
「いくら残すか」だけではなく、「誰が管理するのか」まで考える必要がある
わけです。
成年後見制度についても知っておく
判断能力が十分でない方について、財産管理や契約などを支える仕組みとして、成年後見制度があります。
知的障害のある方も対象になり得ます。
ただし、
「障害があるなら、必ず成年後見を利用しなければならない」
という単純な話ではありません。
本人の状態、生活環境、財産の状況などによって、必要性は変わります。
さらに2026年には成年後見制度や遺言制度を見直す法律が成立しています。
成年後見制度の見直しについては、今後施行される予定なので、実際に利用を考える段階では、その時点の最新制度を確認することが大切です。
親の財産をどう残すかも考えておく
親亡き後の準備では、
「子どもにいくら残すか」
も重要です。
しかし、単純に
「子どもの口座にたくさんお金を入れておけばいい」
というわけでもありません。
例えば、
- 預金
- 証券
- 生命保険
- 不動産
- 車
- その他の資産
などがあります。
これらを、
「親が亡くなった後、どう引き継ぐのか」
まで考えておく必要があります。
特に不動産などは、
「誰が相続するのか」
「その後どうするのか」
まで整理しておいた方がいい場合があります。
遺言書も「親亡き後」の準備
親が亡くなった後に、
「誰に何を残すのか」
を明確にしておく方法の一つが遺言書です。
障害のある子どもがいる家庭では、
「誰にどの財産を残すのか」
について、元気なうちに家族で考えておく意味があります。
また、
「財産を残す」
だけではなく、
「親亡き後に、誰が子どもの生活を支えるのか」
まで考えておきたいところです。
遺言書については、家庭の事情によって最適な方法が変わるため、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士などの専門家へ相談するのも選択肢です。
「心身障害者扶養共済制度」も備えの一つ
親亡き後の制度として、知っておきたいのが、
心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
です。
これは、障害のある方を扶養している保護者が掛金を支払い、保護者が死亡または重度障害となった場合に、障害のある方へ終身一定額の年金を支給する制度です。
年金は1口で月2万円
現在の制度では、
- 1口:月額2万円
- 2口:月額4万円
となっています。
年間にすると、
- 1口:24万円
- 2口:48万円
です。
「月2万円では少ないかな?」
と思うかもしれません。
でも、
親が亡くなった後も毎月2万円が入ってくる
というのは、それなりに大きいと思います。
ただし、加入には年齢や健康状態などの条件があり、途中解約した場合などの扱いもあるため、加入前に制度の条件を確認する必要があります。
生命保険も選択肢の一つ
もちろん、しょうがい共済だけで十分というわけではありません。
民間の生命保険を利用して、
「親が亡くなったときに、まとまったお金が入る仕組み」
を作る方法もあります。
ただし、
「保険に入れば安心」
という話でもありません。
考えるときは、
- 現在の資産
- 将来の障害年金
- しょうがい共済
- 親の公的年金
- 将来の生活費
- 住居費
- 保険料
などをまとめて考えた方がいいでしょう。
すでに十分な資産がある家庭なら、必要以上に保険を増やす必要がない場合もあります。
逆に、貯蓄だけでは不安な家庭なら、死亡保障を用意する意味が出てきます。
お金だけでなく「生活情報」も残しておく
ここは、お金と同じくらい重要だと思っています。
親亡き後に必要なのは、お金だけではありません。
例えば、
- 何を食べられるか
- 何が苦手か
- 好きなこと
- 嫌がること
- どんな環境なら落ち着くか
- 睡眠のパターン
- 服薬
- 通院先
- コミュニケーション方法
- パニック時の対応
- 外出するときの注意点
- 日常生活でできること
- 日常生活で難しいこと
こうした情報は、親だからこそ分かっていることがたくさんあります。
だから私は、
「親亡き後の準備=お金+生活情報」
だと思っています。
今から「親亡き後ファイル」を作っておく
我が家なら、元気なうちから少しずつ情報をまとめておきたいです。
お金に関する情報
- 銀行口座
- 証券口座
- 保険
- 不動産
- 毎月の生活費
- 借入金
- 年金
- 手当
- その他の収入
医療に関する情報
- かかりつけ病院
- 診断名
- 服薬
- アレルギー
- 緊急時の連絡先
福祉に関する情報
- 利用している事業所
- 相談支援専門員
- 福祉サービス
- 手帳
- 受給者証
- 各種手当
生活に関する情報
- 食事
- 睡眠
- 入浴
- 排泄
- 着替え
- 外出
- コミュニケーション
- パニック時の対応
将来に関する情報
- グループホーム
- 入所施設
- 短期入所
- 生活介護
- 成年後見などの財産管理
- 遺言書
これを一冊、あるいはデジタルデータとして整理しておくだけでも、かなり違うと思います。
「親しか知らない情報」を減らしておく
親亡き後で怖いのは、
「親にしか分からない」
状態です。
例えば、
「この薬はこのタイミング」
「この音が苦手」
「この食べ物なら食べられる」
「こう声を掛けると落ち着く」
「この事業所に相談すればいい」
こうした情報が親の頭の中だけに残っている。
これでは、親が突然倒れた場合にも困ります。
だから、
元気なうちから少しずつ他の人に共有しておく
ことが大切です。
「親亡き後」は、お金だけを考えない
ここまで考えると、親亡き後の準備は、
「3,000万円貯めれば終わり」
というような単純な話ではないことが分かります。
必要なのは、
子どもの収入
障害年金など、本人が受け取れる可能性のある制度を知っておく。
毎月の生活費
将来、毎月いくら必要なのかを把握する。
親の資産
預金・証券・保険・不動産などを整理する。
福祉サービス
障害福祉サービスやグループホームなどを知っておく。
財産管理
親がいなくなった後、誰が財産や契約を支えるのか考える。
相続
遺言書なども含め、財産をどう引き継ぐのか考える。
このように、いくつもの要素を一緒に考えることが大切です。
我が家も「今から少しずつ」でいいと思っている
正直、子どもがまだ小さい段階で、
「20年後、30年後の生活を完全に決める」
なんて無理だと思います。
制度も変わります。
子どもの状態も変わります。
生活環境も変わります。
だから、
今すべてを決める必要はない
と思っています。
まずは、
「親が突然いなくなっても、最低限の情報が残っている状態」
を作る。
そして少しずつ、
- お金を整理する
- 制度を知る
- 将来の住まいを調べる
- 支援者を増やす
- 必要なら保険や共済を検討する
- 相続や遺言について考える
という準備を進めていく。
それだけでも十分意味があります。
「親亡き後」を考えると、今の生活も見えてくる
親亡き後について調べ始めると、
「将来どうするか」
だけではなく、
「今のうちに何をできるようにしておくか」
も見えてきます。
例えば、
- 一人で食事できる
- 着替えができる
- トイレが使える
- 入浴できる
- 外出できる
- 支援者と過ごせる
- 家族以外の人と生活できる
こうしたことが増えれば、将来の生活の選択肢も増えていきます。
だから、
親亡き後の準備は、「今の子どもの生活を少しずつ広げていくこと」でもある
のだと思います。
まとめ|親亡き後のために、今からできること
障害のある子どもの親にとって、「親亡き後」はどうしても不安なテーマです。
でも、
「何千万円必要なんだろう?」
と考えているだけでは、不安はなかなか減りません。
大切なのは、
「毎月いくら必要なのか」
「将来いくら収入があるのか」
「親のお金をどう残すのか」
「誰が管理するのか」
「どこで生活するのか」
を、一つずつ具体的にしていくことです。
今すぐ全部を決める必要はありません。
まずは、
家族のお金と制度を整理する。
そして、
親にしか分からない生活情報を残しておく。
それだけでも大きな一歩だと思います。
親が元気なうちに、
「親がいなくても、この子の生活が回る仕組み」
を少しずつ作っていく。
それが、我が家が考える「親亡き後」の準備です。
まだまだ先の話ですが、先だからこそ、少しずつ準備していきたいと思っています。

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