「障害のある子どもの将来が心配……」
「自分にもしものことがあったら、この子はどうなるんだろう?」
障害のある子どもを育てている親なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
我が家でも、子どもの将来のお金について考える中で、気になった制度があります。
それが**心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)**です。
「障害児扶養共済制度」と呼ばれることもありますが、正式には「心身障害者扶養共済制度」といいます。
この制度は、障害のある方を扶養している保護者が毎月掛金を支払い、保護者が死亡したり、重度障害になった場合に、障害のある方へ終身にわたって年金が支給される制度です。
2026年現在、1口につき月額2万円、年間24万円の年金が支給されます。
しかも掛金は、所得税・住民税の対象となる所得から全額控除できます。
この記事では、障害児を育てている親の目線から、この制度について分かりやすく解説します。
※この記事は2026年時点の公的資料をもとに作成しています。掛金や制度内容は今後変更される可能性があります。加入を検討する際は、お住まいの都道府県・指定都市の最新情報をご確認ください。
障害児扶養共済制度とは?
まず、制度の仕組みを簡単に説明します。
心身障害者扶養共済制度は、障害のある方を扶養している保護者が毎月掛金を支払うことで、保護者に万一のことがあった場合、障害のある方に終身年金を支給する制度です。
イメージすると、
親が元気なうち
↓
毎月、掛金を支払う
↓
親が死亡・重度障害
↓
障害のある子どもに終身年金を支給
という仕組みです。
この制度は民間の生命保険とは違い、都道府県・指定都市が条例に基づいて実施している公的な制度です。
制度全体については、厚生労働省と独立行政法人福祉医療機構(WAM)が案内しています。
1口で月2万円、年間24万円の終身年金
この制度の最大の特徴はここです。
保護者が死亡、または所定の重度障害となった場合、障害のある方に、
1口:月2万円
の年金が支給されます。
さらに、障害のある方1人につき2口まで加入可能です。
その場合、
| 加入口数 | 月額年金 | 年間 |
|---|---|---|
| 1口 | 2万円 | 24万円 |
| 2口 | 4万円 | 48万円 |
となります。
そして重要なのが、これは「10年間だけ」などの期間限定ではありません。
障害のある方が亡くなる月まで、終身で支給されます。
例えば1口加入していて、親が亡くなった後に子どもが30年間年金を受け取った場合、
2万円 × 12か月 × 30年
= 720万円
になります。
もちろん、これは「30年間受け取った場合」の単純計算です。
実際の受給期間は、障害のある方の年齢やその後の生活によって変わります。
掛金はいくら?
2026年4月1日現在の掛金は、加入時の年度の4月1日時点における保護者の年齢によって決まります。
| 加入時の年齢 | 月額掛金(1口) |
|---|---|
| 35歳未満 | 9,300円 |
| 35歳以上40歳未満 | 11,400円 |
| 40歳以上45歳未満 | 14,300円 |
| 45歳以上50歳未満 | 17,300円 |
| 50歳以上55歳未満 | 18,800円 |
| 55歳以上60歳未満 | 20,700円 |
| 60歳以上65歳未満 | 23,300円 |
2026年4月現在、1口あたり月9,300円~23,300円となっています。
2口加入する場合は、基本的にこの金額の2倍です。
例えば40歳以上45歳未満で加入すると、
1口:月14,300円
2口:月28,600円
となります。
なお、掛金は制度の見直しによって改定される場合があります。
掛金はずっと払い続けるの?
ここも非常に重要です。
掛金には免除制度があります。
基本的には、
①加入してから20年以上経過
かつ
②加入者が65歳となる年度の加入応当日の前日まで
という2つの条件を満たすまで掛金を支払い、その後は掛金が免除されます。
つまり、若いうちに加入すると、65歳以降もずっと掛金を払い続けるという仕組みではありません。
ただし、「20年間払えば必ず終わり」という単純な制度でもありません。
加入時の年齢によって、実際の掛金支払期間が変わります。
例えば40歳で加入すると?
例えば40歳で1口加入した場合、現在の掛金は月14,300円です。
単純計算すると、
14,300円 × 12か月
= 年間171,600円
です。
仮に25年間支払ったとすると、
171,600円 × 25年
= 429万円
となります。
北海道の制度資料でも、40歳で加入し80歳で亡くなったモデルケースでは、掛金総額429万円という例が示されています。
一方、保護者が亡くなった後、障害のある方が20年間年金を受け取った場合、
2万円 × 12か月 × 20年
= 480万円
です。
30年間なら、
2万円 × 12か月 × 30年
= 720万円
になります。
ただし、これは単純な受取額の比較です。
「掛金を払った金額より必ず多く戻ってくる制度」と考えるのは間違いです。
後述しますが、障害のある方が先に亡くなった場合などには、年金ではなく弔慰金となるためです。
掛金は全額「所得控除」になる
この制度には、もう一つ大きなメリットがあります。
心身障害者扶養共済制度の掛金は、所得税では小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
つまり、条件を満たした掛金は全額を所得から控除できます。
例えば、
年間掛金が17万1,600円
だった場合、
17万1,600円全額が所得控除の対象
になります。
ただし、
「17万1,600円税金が安くなる」
という意味ではありません。
所得から17万1,600円を差し引くことができるという意味です。
実際の節税額は、所得税率や住民税などによって変わります。
iDeCoと同じ「小規模企業共済等掛金控除」
ここは、以前このブログで紹介したiDeCoとも関係があります。
iDeCoの掛金も、小規模企業共済等掛金控除の対象です。
そして、心身障害者扶養共済制度の掛金も同じ所得控除の対象です。
つまり、
iDeCo
+
心身障害者扶養共済制度
の両方に掛金を支払っている場合、それぞれの掛金について所得控除を受けることができます。
もちろん、実際の税額は所得や控除の状況によって変わります。
▼iDeCoについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
【特別児童扶養手当の年収目安と所得制限対策|2026年版】

特別児童扶養手当の所得制限にも関係する?
ここは、障害児家庭にとってかなり重要なポイントです。
特別児童扶養手当には所得制限があります。
そして、その所得制限を計算する際には、一定の控除が認められています。
その中には、
小規模企業共済等掛金控除
も含まれています。
つまり、心身障害者扶養共済制度の掛金についても、特別児童扶養手当の所得制限を計算する際の控除に関係する場合があります。
これはかなり重要です。
例えば、
心身障害者扶養共済制度に加入
↓
掛金を支払う
↓
所得税・住民税の所得控除
↓
さらに制度上、特別児童扶養手当の所得制限を計算する際にも小規模企業共済等掛金控除相当額が控除される
という関係があります。
ただし、
「この制度に加入すれば特別児童扶養手当を必ず受給できる」
という意味ではありません。
特別児童扶養手当の所得制限は、扶養親族数や所得、その他の控除などを含めて計算されます。
そのため、加入を検討する場合は、共済そのものの保障と、所得制限への影響を分けて考えることが大切です。
誰でも加入できるわけではない
心身障害者扶養共済制度は、誰でも加入できるわけではありません。
基本的には、障害のある方を現に扶養している保護者で、次の条件を満たす必要があります。
- 住んでいる都道府県・指定都市の制度であること
- 加入年度の4月1日時点で満65歳未満であること
- 特別な疾病や障害がなく、生命保険契約の対象となる健康状態であること
- 障害のある方1人につき加入できる保護者は1人
などです。
特に注意したいのが、
健康状態の審査がある
という点です。
この制度は、生命保険会社との保険契約を利用しているため、健康状態などによっては加入できない場合があります。
障害のある子どもは何歳まで対象?
実は、障害のある方については、制度上の対象年齢に上限はありません。
対象となるのは、将来独立して生活することが困難と認められる方で、例えば、
- 知的障害
- 身体障害者手帳1級~3級
- 精神または身体に永続的な障害があり、上記と同程度と認められる方
などが対象です。
つまり、
「障害児のうちに加入しないといけない」という制度ではありません。
ただし、保護者側には65歳未満などの加入要件があるため、加入を考えているなら、年齢を理由に機会を逃さないことが重要です。
自閉症や知的障害でも対象になる?
ここも気になるところだと思います。
WAMの制度説明では、精神または身体に永続的な障害があり、その程度が知的障害や身体障害1~3級と同程度と認められる場合も対象とされています。
例として、自閉症なども挙げられています。
ただし、
「自閉症と診断された=自動的に加入対象」
という意味ではありません。
制度上の障害程度などの要件を満たす必要があります。
実際に加入できるかどうかは、お住まいの自治体の窓口で確認してください。
保護者が死亡した場合だけ?
いいえ。
この制度では、加入者が死亡した場合だけでなく、所定の重度障害となった場合にも年金支給の対象になります。
つまり、
「親が亡くなってしまった」
だけではなく、
「親が重度障害になり、それまで子どもを支えていた生活が難しくなった」
というケースにも備えることができます。
ここは、一般的な「死亡保障」だけを考える生命保険とは違うポイントです。
障害のある子どもが先に亡くなったらどうなる?
ここは必ず知っておきたいデメリットです。
この制度は、
親が亡くなったら子どもに年金を支給する
ことを目的としています。
そのため、障害のある方が加入者より先に亡くなった場合、終身年金を受け取ることはできません。
一定の条件を満たす場合には、加入期間に応じた弔慰金が支給されます。
つまり、
「何十年も掛金を払えば、その金額が必ず戻ってくる」
という制度ではありません。
ここは、加入を検討するときに絶対に理解しておくべきところです。
途中でやめたら掛金は全額戻ってくる?
これも違います。
加入者が途中で脱退した場合、一定の条件を満たせば脱退一時金が支給されます。
ただし、支払った掛金がそのまま全額返ってくるわけではありません。
そのため、
「貯金代わりに加入する」
という考え方はおすすめできません。
あくまで、
親に万一のことがあったとき、障害のある子どもの生活を長期的に支えるための保障
として考える制度です。
この制度のメリット
ここまでを整理すると、主なメリットは次のとおりです。
メリット① 月2万円の終身年金
1口なら月2万円、2口なら月4万円。
しかも障害のある方が亡くなるまで終身で支給されます。
メリット② 親の死亡だけでなく重度障害にも対応
親が亡くなった場合だけでなく、所定の重度障害になった場合も年金支給の対象になります。
メリット③ 掛金が所得控除になる
掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となり、全額を所得から控除できます。
メリット④ 特別児童扶養手当の所得制限にも関係する
特別児童扶養手当の所得制限を計算する際、小規模企業共済等掛金控除相当額が控除対象となっています。
これは障害児家庭にとって非常に重要なポイントです。
メリット⑤ 公的な仕組みで運営されている
都道府県・指定都市が実施主体となり、独立行政法人福祉医療機構が制度を保険しています。
デメリット・注意点
もちろん、メリットだけで加入を決めるのは危険です。
デメリット① 健康状態によって加入できない場合がある
加入時には健康状態の告知が必要です。
生命保険契約の対象となる健康状態であることが要件となっているため、健康状態によっては加入できない場合があります。
デメリット② 掛金を払った分が必ず戻るわけではない
子どもが親より先に亡くなった場合などは、年金ではなく弔慰金となります。
また、途中で脱退した場合も、掛金の全額が返還されるわけではありません。
デメリット③ 掛金は年齢が上がるほど高くなる
2026年4月現在では、
35歳未満:9,300円
40歳以上45歳未満:14,300円
50歳以上55歳未満:18,800円
60歳以上65歳未満:23,300円
となっています。
若い年齢で加入するほど、掛金の負担を抑えやすい仕組みです。
デメリット④ 月2万円では十分とは言えない
ここも冷静に考える必要があります。
1口の年金は月2万円です。
年間では24万円。
これだけで障害のある方の生活すべてを支えることはできません。
したがって、
心身障害者扶養共済制度だけで将来のお金を準備する
という考え方はおすすめできません。
生命保険とどちらがいい?
これは「どちらか一方」という話ではありません。
心身障害者扶養共済制度は、
障害のある子どもに終身で一定額を残す
ことに特化した制度です。
一方、生命保険は、
- 必要保障額
- 保険期間
- 死亡保障
- 高度障害保障
- 保険金額
などを柔軟に設計できます。
そのため、
生命保険+心身障害者扶養共済制度
という組み合わせも考えられます。
例えば、
「親が亡くなった直後に必要になる大きなお金」
→ 生命保険
「その後の長期的な生活費」
→ 心身障害者扶養共済制度
という考え方です。
もちろん、家庭の資産状況や必要保障額によって最適な組み合わせは変わります。
iDeCoと心身障害者扶養共済制度は何が違う?
どちらも所得控除があるため、混同しやすい制度です。
しかし、目的がまったく違います。
| 心身障害者扶養共済制度 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 障害のある子どもの将来保障 | 自分の老後資金 |
| 掛金 | 年齢により決定 | 自分で設定 |
| 給付 | 親の死亡・重度障害時に子へ終身年金 | 原則、自分の老後に受給 |
| 所得控除 | あり | あり |
| 子どもの保障 | ◎ | × |
| 老後資金 | × | ◎ |
つまり、
iDeCo=自分の老後
心身障害者扶養共済=障害のある子どもの将来
と考えると分かりやすいです。
目的が違うため、単純にどちらが優れているというものではありません。
2口加入したほうがいい?
ここは家庭によって判断が分かれます。
2口加入すると、親に万一のことがあった場合、
月4万円
の終身年金になります。
年間では、
48万円
です。
1口との差は月2万円、年間24万円。
かなり大きな違いです。
一方で、掛金も2倍になります。
そのため、
「2口の方がお得だから加入する」
ではなく、
「将来、子どもに毎月いくら必要なのか」
から逆算するのがいいと思います。
例えば、
- 障害年金
- 特別障害者手当などの制度
- 親の生命保険
- 預貯金
- NISAなどの資産
- 心身障害者扶養共済制度
をすべて合わせて考えるべきです。
障害児の親なら、一度は検討する価値がある制度
個人的にこの制度で一番重要だと思うのは、
「親がいなくなった後の生活を、今のうちから制度として準備できる」
という点です。
障害のある子どもを育てている家庭では、
「自分が元気なうちは何とかなる」
というケースが多いと思います。
問題は、
親が病気になったとき
親が重度障害になったとき
親が亡くなったとき
です。
そのときに、
「誰が子どもの生活を支えるのか?」
「毎月いくら必要なのか?」
「生活費はどこから出すのか?」
という問題が一気に出てきます。
心身障害者扶養共済制度は、この問題に対して、
「親がいなくなった後にも、毎月一定額を終身で残す」
という非常にシンプルな仕組みを提供しています。
ただし「絶対に加入すべき」ではない
ここは強調しておきたいところです。
この制度は非常に魅力的ですが、全員にとって最適というわけではありません。
例えば、
- すでに十分な資産がある
- 大きな生命保険に加入している
- 親の健康状態から加入できない
- 掛金の負担が家計を圧迫する
- 子どもの将来に必要な資金を別の方法で十分準備できている
という家庭なら、無理に加入する必要はありません。
逆に、
「親が亡くなった後の子どもの生活費を、できるだけ長期間にわたって確保したい」
という家庭には、検討する価値があります。
まとめ|心身障害者扶養共済制度は「親亡き後」に備える制度
心身障害者扶養共済制度について、最後にまとめます。
主なポイント
- 正式名称は「心身障害者扶養共済制度」
- 「障害児扶養共済制度」と呼ばれることもある
- 障害のある方を扶養する保護者が加入する
- 保護者は原則として加入年度の4月1日時点で65歳未満
- 健康状態による加入審査がある
- 障害のある方1人につき2口まで加入できる
- 1口につき月2万円の終身年金
- 2口なら月4万円
- 掛金は加入時の年齢によって決まる
- 2026年4月現在、1口月9,300円~23,300円
- 掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象
- 掛金は所得税・住民税の所得控除になる
- 特別児童扶養手当の所得制限の計算にも関係する
- 親が死亡した場合だけでなく、所定の重度障害となった場合も対象
- 子どもが先に亡くなった場合は終身年金ではなく弔慰金
- 途中で脱退しても掛金が全額戻る制度ではない
個人的には、障害児を育てている家庭なら、「知らないままにしておく」のはもったいない制度だと思います。
特に、
「自分にもしものことがあったら、この子の生活費をどうするか?」
という問題をまだ具体的に考えていない家庭なら、一度調べてみる価値があります。
ただし、心身障害者扶養共済制度だけで将来の生活をすべて保障できるわけではありません。
生命保険、障害年金、各種手当、預貯金、NISAなどと組み合わせて、「親がいなくなった後に毎月いくら必要なのか」から逆算して考えることが重要です。
我が家でも、子どもの将来を考えるときに、「今いくら持っているか」だけではなく、
「自分たちがいなくなった後、毎月いくら入ってくる仕組みを作れるか」
という視点が必要だと感じています。
この制度は、そのための選択肢の一つです。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「障害者扶養共済制度(しょうがい共済)」
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「しょうがい共済制度のごあんない」
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「障害者扶養共済制度の掛金」
- 国税庁「小規模企業共済等掛金控除」
- 厚生労働省「特別児童扶養手当について」
- 北海道「心身障害者扶養共済制度について」
制度や掛金は変更される可能性があります。加入を検討する場合は、必ずお住まいの都道府県・指定都市の最新情報をご確認ください。

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